医療文献

第3報 うつ、睡眠障害の高濃度酸素液(WOX)による改善効果

 

萩原敏且1,4)、猪森茂雄2)、松本美弥子1,4)、織田慶子3、4)、松本高明 1,4)

1)メディサイエンス・エスポア株式会社
2)いのもり脳神経外科クリニック
3)保健医療経営大学保健医療経営学科
4)NPO法人QOLサポート研究会

はじめに

気分障害であるうつ病はポピュラーな病気で、諸外国の疫学調査によれば生涯有病率(これまでにうつ病を経験した者の割合)は十数%といわれ、わが国の疫学調査でも生涯有病率は5.2%、年間有病率(過去12ヶ月間にうつを経験した者の割合)は1.9%である。うつ病になりやすい要因として、体質などの素因(遺伝子)だけではなく、生活習慣病と同様にストレスなど環境因子よって規定されることから、「うつ病はこころの生活習慣病」とも呼ばれている1)。患者発生数を見ると、1996年以降の18年間で、「うつ・躁うつ」の患者は2011年に一時減少したものの2014年には2.5倍以上の増加となっている2)。
うつ病はこれまで神経伝達物質のモノアミン欠乏による生化学的異常とされ、細胞学的機能障害ではないとしていたが、最近、脳機能画像解析研究が著しく進歩し、微細な脳の形態や構造の解析が可能になり、うつ病患者で対照と比べ海馬の体積が有意に減少していることが報告されるようになり、神経解剖学的異常はないという従来の定説が覆させられようとしている3)。また、うつ病では視床下部・下垂体・副腎皮質系の異常が高率に存在し、血中コルチゾール濃度が高いことが知られているが、血中コルチゾール濃度と海馬委縮は負の相関にあることから、高濃度コルチゾールが海馬神経を障害する可能性が明らかにされている3)。さらに脳の血流状態をSPECT(シングル・フォト・エミッションCT)で測定し、中等度うつ病者で前頭葉優位に血流が低下するが、治療により寛解した患者のうち75%に脳血流の正常化が示されたとしている4)。さらに、SDS(自己評価尺度)による疲労感の高さと背側前頭葉下部の相対的血流量低下の相関が示されていることから、過重労働等が惹起する疲弊、抑うつ状態が脳機能低下を伴う現象と認識されている4)。このようにうつの要因として酸素不足が考えられることから、海外では有酸素運動療法がすすめられており、薬物療法よりも有効であるという報告もあるものの、我が国での報告は少ない5)。
われわれは大気下で高濃度溶存酸素が長期間保持され、飲用により血中酸素飽和度SpO2が上昇する酸素リキッド(WOX)を開発し6)、本製品がCOPDの症状改善に効果が有ることを報告した7)。さらに予備試験においてうつ症状の改善にも効果が期待される結果を得ていることから、うつ病が疑われる症状を有する者を対象にWOXの飲用試験を試みた。また、うつ病の主要症状として睡眠障害があり、自覚症状と医師の診断もあわせるとうつ病患者の90%以上にみられることから8)、睡眠障害を訴える希望者に対してもWOXの飲用試験を行った。

対象および方法

被検者は試験結果について個人情報保護法に基づき、個人が特定できない方法で公開することの了解を得た成人17名を対象とした。被験者は試験実施にあたり性別、年齢、体重、基礎疾患の有無など一般的な質問票への回答とともに、表1に示す方法でWOXを飲用した。臨床症状についてはZungの抑うつ尺度(Self-rating Depression Scale:SDS)より20項目に乏尿を加えた質問票(表2)により4段階自己評価票で調査した。総合評価の判定は筒井の報告9)に従った。なお、飲用者に対する動脈血酸素飽和度(SpO2)は測定していない。
試験に参加した対象者はうつ病様症状の調査では7名(男3名、年齢50-80 歳代;女4名、年齢50-50歳代 )、睡眠障害の調査では10名(男2 名、年齢30および50歳代、女8名、年齢20-50歳代)であった。抑うつ尺度調査については、うつ病様症状者では飲用前と飲用中の7日間に各項目について自己評価を記録した。また、このうち3名については1週間の飲用試験を3回繰り返し、自己評価点数の変動をみた。また、睡眠障害はうつの主要症状でもあることから、睡眠障害者についても検討した。睡眠障害者では自己評価は飲用前と飲用7日後の2回に各項目について行った。

結 果

1.うつ病様症状者
うつ病様症状の被検者7名は、いずれも友人などの紹介により本試験に参加した。検査前のSDS評価では7名中4名が中等度の抑うつ性(50点以上)、2名が軽度の抑うつ性(40点台)、残り1名がうつ状態はほとんどなし(40点未満)であった。飲用1週間後の評価点数は、中等度うつの3名でやや低下したが、逆に上昇がみられた例もあった(図1 )。このうち、1週間の飲用を3回繰り返した例(図2)では、3回目でかなりの低下がみられ、被検者自身からも朝の目覚めがよくなったという報告を得ている。そのほか図には示していないが、2回繰り返した例でも1回目に比べ自己評価点で改善が示されている。

2. 睡眠障害者
睡眠障害者については飲用前および飲用7日後の2回でのSDS評価点数の変動をみた。飲用前の評価点数はうつ様症状者に比べて低かったが、軽度の抑うつ(40点台)とされる例が3名にみられた。また、うつ様症状ほとんどなしが7名であった。1週間のWOX飲用では、1名を除きうつ状態はほとんどなしに低下したが、うつ状態ほとんどなしの群で1ポイント上昇が3例にみられた(図3)。

考 察

うつ病患者では前頭葉に有意な血流低下が認められ、10か月以内の治療期間ののちに寛解した患者の75%に脳血流の正常化が示されていることから4)、うつ病と脳の血流の関連性が注目されており、海外では治療法として有酸素運動が取り入られている。さらに、うつ病の運動療法研究報告5)によると、有酸素運動だけでも、薬物療法に比べ再発率が低いとしている。
著者らが自社開発し製造した高濃度酸素リキッド(WOX)は、体内に酸素を補給する有用な手段であることはすでに明らかにしたが6)、本論文では抑うつ状態の改善効果とともに睡眠障害改善について、抑うつ尺度にもとづく自己評価票(SDS)によるアンケート調査を実施した。その結果、自己評価の判定には個人差が大きく、全てが改善されるという結果は得られなかったが、WOX飲用者の半数以上で評価点数の低下がみられた。このことから、うつ病や睡眠障害ではWOXの飲用による症状改善が可能であり、1週間の飲用試験を3回繰り返した例では、回を重ねるごとに評価点数が低下していることから、飲用期間を長くすることによる効果の増大が期待された。なお、うつ様症状および睡眠障害者の飲用試験希望者募集にあたって性別は特定していなかったが、うつ様症状で男性3名に比べて女性が4名、睡眠障害についても10名中8名が女性であったことから、うつ症状や睡眠障害にたいして女性の関心が高いと思われた。なお、SDSの評価点がWOX飲用後に高くなった例(症状が悪くなる)がうつ病様症状で2名、睡眠障害で2名に見られたが、自己による主観的評価のために治療後にSDSの結果が悪くなることもあることから、例数を加えてさらに検討したい。

利益相反申告

報告すべきものなし

文 献

  1. 樋口輝彦:気分障害、新現代精神医学文庫 新興医学出版社 2005;1-6.
  2. 図録うつ病・躁うつ病の患者総数.( http://www2.ttnc.ne.jp/honkawa/2150.html)
  3. 山脇成人:うつ病の脳科学的研究:最近の話題.うつ病−{1}基礎…病態、第129
    回日本医学会シンポジウム、東京、2005.
  4. 小山文彦、北條 敬,大月健郎、山本晴義:脳血流99 Tc-ECD SPECTを用いたうつ病像の客観的評価.日職災医誌、2008;56;122-127,
  5. うつの運動療法研究報告:青葉こころのクリニック 心療内科・ペインクリニック精神科.
    (http://www.aoba-kokorono-c.com/treatment2.html#TRS)
  6. 松本高明、大槻公一、谷口 明 ほか:高濃度溶存酸素液(WOX)飲用による同約血酸素飽和度(SpO2)への効果. Prog Med  2016; 36 :127-130..
  7. 萩原敏且、山崎勉、野口いづみ ほか:慢性閉塞性肺疾患(COPD症状と高濃度酸素液(WOX)の飲用効果. Prog Med 2016; 36:571-576.
  8. 渡辺昌祐、光信克甫:プライマリケアのためのうつ病診療Q&A 改訂第2版 金原出版社 1997;91,.
  9. 筒井末春:うつ状態自己評価表. (http://ikeda-hp.com/L_rihabiri/tiikir_center/hyouka/tutui.htm.)

表1 WOXの飲用方法(飲用量)について

飲用試験用に500mLペットボトル6本提供。
起床時(朝食前)125-250mL
就寝時     125-250mL
酸素ボンベを使用している方で、呼吸困難を感じられるときは125-250mL
その他、体調により125-250mLを適宜増加させます。
症状の進行などによりWOXが不足した場合はご連絡下さい

 

表1 Zungの抑うつ尺度SDS(Self-rating Depression Scale)に基づく調査票

表1 Zungの抑うつ尺度SDS(Self-rating Depression Scale)に基づく調査票

評価基準
40未満: うつ症状ほとんどなし
40-49 : 軽度の抑うつ
50以上: 中程度の抑うつ

図1 うつ病様症状者アンケート調査結果

図1 うつ病様症状者アンケート調査結果

図2 うつ病様症状患者での3週間連続飲用例(No.3)

図2 うつ病様症状患者での3週間連続飲用例(No.3)

図 3 睡眠障害アンケート調査結果

図 3 睡眠障害アンケート調査結果

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