医療文献

第2報論文 慢性閉塞性肺疾患(COPD)症状と高濃度酸素液(WOX)の飲用効果

萩原敏且1,4)、山崎 勉 2,4)、野口いづみ3,4)、松本美弥子1,4)、織田慶子4)、松本高明1,4)
Hagiwara Toshikatsu  Yamazaki Tsutomu Noguchi Izumi
Matsumoto Miyako Oda Keiko Matsumoto Takaaki
1) メディサイエンス・エスポア株式会社
2) 若葉こどもクリニック、埼玉医科大学小児科学教室
3) 鶴見大学歯学部麻酔科
4) 特定非営利活動法人 QOLサポート研究会

はじめに

慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease :COPD)はタバコの煙を主とする有害物質を長期にわたって吸入暴露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景にした中高年に発症する生活習慣病で、喫煙者の15-20%がCOPDを発症し、治療によっても元に戻ることはないといわれている1)。厚生労働省の統計による2014年の死亡患者数は16,184人で全体として増加傾向にある2)。また2001年の疫学調査研究NICE(Nippon COPD Epidemiology) スタディによると、日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%、患者数は530万人と推定されている3) 。しかし、2011年に病院でCOPDと診断された患者数は22万人であることから、COPDであることに気づいていない人は500万人以上いると推定されている2)。COPDを疑うべき症状として40歳以上、喫煙歴がある人、慢性の咳・痰、階段や坂道を上る際の息切れなどがあるが、息切れの程度により重症度の判断も可能とされ、更衣や洗面など日常動作での息切れは重症とされる3)。われわれは自社開発した気液混合装置(特許出願中 特願2010-279153)を用いてRO水と純酸素の製品(WOX)を製造販売しているが、本製品は大気圧下で長時間放状態においても酸素が高濃度で長期間維持できることはすでに報告した4)。また、あわせて本製品の飲用により動脈血酸素飽和度(SpO2)が上昇することから、腸管から酸素を補給できる製品であることも明らかにした4)。本論文では慢性閉塞性肺疾患COPDと診断された患者1名においてWOX飲用によりSpO2 値および呼吸器症状の改善に有効であることを示すとともに一般被験者で息切れなどCOPDが疑われる呼吸器症状の改善に有効かどうか検討した。

対象および方法

試験結果について個人情報保護法に基づき、個人が特定されない方法で公開することの了解を得た成人を対象とした。試験1はCOPDと診断され、在宅酸素療法をおこなっている76歳の男性COPD症例で、WOXを1日500〜1,000mLを複数回に分けて飲用する試験を1ヶ月間継続した。SpO2は患者本人がパルスオキシメータplus one PMP-100(パシフィックメディコ株式会社、東京)で測定した。病気の経過、症状の記録、SpO2測定値に関する資料は本人から提出された(表3参照)。試験2ではCOPDと診断されていないが、高齢であることや長期の喫煙歴があること、息切れや痰がからむなど症状を自覚する被験者17名を飲用期間により2群に分けた。1群は8名(男7名、年齢60-70歳代、女1名:年齢70歳代)で2週間飲用し、他の群は9名(男7名:年齢60 -70歳代、女2名:年齢50-60歳代)で4週間飲用した。飲用はおよその目安として1日ペットボトル半分(250mL)とし、朝起床後および夜睡眠前としたが、体調に応じて量は自己判断で調整した(表1)。なお、何れの群においてもSpO2の測定は行っていない。
アンケート調査は試験前に年齢、性別およびIPAG(International Primary Case Airways Group) 診断・治療ハンドブック日本語版5)に準じた「呼吸器症状に関する質問票」(表2)を用いた。高齢と喫煙歴が主要な項目で、IPAGの合計点が17ポイント以上はCOPDの検査の目安であり5)、70歳以上で喫煙量が多いとそれだけで17ポイントになる(表1参照)。また、飲用中の自覚症状の変化は「COPDアセスメントテスト(CAT)」6)(図1)を用いた。症状として「咳がでる」、「息苦しい」など8項目があり、症状は重さによって1から6までに区分され、最も重い症状をポイント6としている。CATは飲用前および飲用後1週間ごとに被験者が記入した。各項目でポイントが下がるほど症状の改善効果が見られたことを示唆している。

結 果

1. 試 験1:2003年頃から息切れなどの症状があり、2010年3月より在宅酸素療法(HOT)を開始している。同年6月に自宅にて湯上り後に意識喪失し、以後急激に病状が悪化してCOPDと診断された。2011年8月28日よりWOX飲用を開始した(1日200-580mL)。体調は表3に示すように、飲用10目後頃より良くなり、9月上旬ころより体調が良くなり、中旬には酸素吸引なしで過ごせる日が増加した。半月後は短時間であれば酸素ボンベ無しでも生活できる状態まで回復した(表にはWOXの飲用開始日を1日目として、その自覚症状等見られた日を追記した)。SpO2の推移では、飲用前の平均が94.1%であったのに対し、飲用後1ヶ月の平均は、96.3%と2.2%上昇している(図1)。飲用31日以降のSpO2の推移ついては図示していないが、その後も飲用をつづけ2012年1月中旬には酸素ボンベ携帯ではあるが「ドライブ」、「ゴルフ」が可能となっている。
2. 試 験2:IPAGのポイントは表1に示すように高齢であること(70歳以上で10ポイント)、喫煙量が多いこと(年間50 箱以上で7ポイント)で高値になり、17ポイント以上でCOPDの可能性が疑われる。本試験の被験者17名中14名((1群7名、2群7名)でCOPDが疑われ、残りの3名(2週間試験で1名、4週間試験で2名)はIPAGの総合点が16ポイント以下でCPODとは判定できなかったが、うち2名は70歳代で、臨床症状から評価するCATでは高値であった(2週間飲用群NO.6、4週間飲用群No.4)。群別では、2週間飲用群で8名中7名が70歳以上で、表に示していないが5名が喫煙は年間50箱以上、また4週間飲用群では9名中6名が70歳以上で、2名が5年間50箱以上であった。
WOX の飲用効果は図1に示した8項目で評価したが、図3および4のグラフのように2週間飲用群では2週間後にCOPDと判定されなかった例も含め、No.4を除く全例で症状の軽減が見られた。また4週間飲用群でもCOPDと判定されなかった例も含め途中の2週間後に全例、4週間後にはNo.1を除き症状はさらに軽減している。得られた飲用後のコメントとして4週間で階段に上る際に息切れしない、身体が軽くなった、咳が減ったなどの効果がみられた。また、2週間飲用でもよく寝つける、息苦しさが減った、トイレの回数がへったなどの効果が寄せられているなど、ほぼ全員に症状の改善が見られたが、気が付いたら楽になっていたという印象も寄せられている。

考 察

CPODは歩行時や階段相談など身体を動かしたときに息切れを起こす労作時呼吸困難や慢性の咳やたんが特徴的な症状とされるが、一般には重症になって診断される例が多く、より早期の段階での診断、治療ができていなのが現状である1)。COPDの治療には禁煙、服薬、栄養、運動などにより治療効果を高めるとともに患者の日常生活を全般にわたり支援する包括的呼吸リハビリテーションと呼ばれる医療システムがあり7)、そのなかに運動療法がリハビリテーションの目的で実施されている。今回飲用試験2ヶ月前に症状の急速な悪化でCOPDと診断された症例について1か月間WOXを飲用した自己評価では、3週間後には日常生活で酸素の吸引無しで過ごせる日が増加し、約7週間後にはドライブやゴルフが可能となったと報告している。当該例はWOXを承知して飲用していることから、プラセボ効果は否定できないものの、SpO2値の上昇もあり、WOXがCOPDの症状改善に役立っていると考えられた。しかし、その後食中毒の治療などで体調を崩し、入院中はWOXの飲用ができないことなどもあり2015年 に死去したことから、その後の報告はえられなかった。
息切れなどの症状を有する検査希望者について日本呼吸器学会などが推奨するIPAG質問票によるアンケート調査をおこない、調査結果からCOPDが疑われる14名とCOPDと判定されなかった3名についてWOX飲用試験を行った。飲用後のコメントとして4週間で階段に上る際に息切れしない、身体が軽くなった、咳が減ったなどの効果がみられた。また、2週間飲用でもよく寝つける、息苦しさが減った、トイレの回数が減ったなど、ほぼ全員に症状の改善が見られた。本試験も、試験1と同様二重盲検試験ではないので、プラセボ効果は否定出来ないが、被験者の感想からWOXの効果は示されていると考えられる。今後二重盲検などによる確認試験を行いたい。
これまで酸素不足を補うために高濃度酸素水が開発・市販されてきたが、このような効果のある成果は得られていない8)ことを前報4)で報告するとともに、WOXの飲用により動脈血酸素飽和度(SpO2)が上昇することを明らかにしたが、本報ではCOPDを疑う呼吸機能障害者にWOXの効果があることを明らかにした。COPD患者には高濃度酸素ガス補給は呼吸不全を起こすという報告9)もあるが、WOXは有酸素運動と同様に大気圧下での溶解型酸素の補給で、消化管から取り入れられることから、包括的呼吸リハビリテーションシステムでの新たな酸素補給法としての有用性を更に検討したい。

結  語

WOXの溶解型酸素は飲用により消化管から吸収されCOPDの初期症状である息切れや疲れの回復に効果が見られることから、包括的呼吸リハビリテーションシステムでの活用が期待される。

追  記

本論文の一部は第9回日本予防医学会(2011年11月)および第11回日本予防医学会(2012年11月)において発表した。

利益相反自己申告

申告すべきものなし

文 献

1) 日本呼吸器学会:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸器の病気
http://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=1.
2) GOLD日本委員会:COPD情報サイトGOLD-jac.jp: http://www.gold-jac.jp/copd_facts_in_japan/
3)日本COPD対策推進会議編:COPD診療のエッセンス2014年版.
4) 松本高明他:高濃度溶存酸素液(WOX)飲用による動脈血酸素飽和度(SpO2)への効果. Prog Med.2016, 36:127-130.
5) IPAG診断・治療ハンドブック日本語版(2005).
6) COPD Assessment Test, 2014: http://www.catestonline.org/english/index_Japan.htm.
7) 木田厚瑞:包括的呼吸リハビリテーション. COPDよくわかる最新医学.2008,104-105.主婦の友社.
8) 国立健康・栄養研究所構築グループ:「酸素水」の効果に関する情報(ver.090219)2006.
9) Austin M A et al: Effect of high flow oxygen on mortality in chronic obstructive pulmonary
disease patients in prehospital setting: randomised controlled trial .BJM 2010;341:c5462.

 

表1 WOXの飲用方法(飲用量)について

表1 WOXの飲用方法(飲用量)について

 

表2 IPAG(International Primary Case Airway Group)呼吸器症状に関する質問票

表2 IPAG(International Primary Case Airway Group)呼吸器症状に関する質問票
注:17ポイント以上はCOPDの検査対象

 

図1 COPDアセスメントテスト(CAT)

図1 COPDアセスメントテスト(CAT)
http://www.catestonline.org日本語版参照

 

表3 COPD患者から報告されたWOX飲用前および後の臨床経過

表3 COPD患者から報告されたWOX飲用前および後の臨床経過

 

図2 COPD患者におけるWOX飲用前及び後のSpO2 値の変動

図2 COPD患者におけるWOX飲用前及び後のSpO2 値の変動

 

図 3 飲用2週間のIPAG合計点とCAT評価点の推移

図 3 飲用2週間のIPAG合計点とCAT評価点の推移

 

図 4 飲用4週間のIPAG合計点とCAT評価点の推移

図 4 飲用4週間のIPAG合計点とCAT評価点の推移

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