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第1報論文 高濃度溶存酸素液(WOX) 飲用による動脈血酸素飽和度(SpO2)への効果

 

第1報

原著 高濃度溶存酸素液(WOX)飲用による動脈血酸素飽和度(SpO2)への効果

松本高明 1,4)、 大槻公一 2,4)、 谷口 明 1,4)、 山崎 勉 3,4)、
Matsumoto Takaaki, Ootsuki Kouichi, Taniguchi Akira. Yamazaki Tsutomu
織田慶子4)、 萩原敏且 1,4)
Oda Keiko, Hagiwara Toshikatsu

1)メディサイエンス・エスポア株式会社
2)京都産業大学先端技術研究所
3)若葉こどもクリニック
4)NPO法人 QOLサポート研究会

はじめに

近年われわれを取り巻く環境は悪化をたどっており、大気中の酸素も減少傾向にあるとされている1)。さらに高齢化にともない人体の呼吸機能も低下することから2)、自然呼吸
以外の酸素補給が健康維持に重要となっている。補給法として最近では高気圧高濃度酸素カプセルが注目されているが、設置場所を要することや高圧の密閉された中で長時間
滞在するなど、個人で日常的に使用するには適していない。一方、欧米を中心に経気道以外からの酸素補給として消化管からの補給が考えられ、これまで飲用高濃度酸素水が
開発されてきたが、明確な効果が得られていないのが現状である。そのため2006年までの文献検索情報では、酸素水での酸素摂取の有効性は認められないという結論に達して
いる3)。しかし、同情報には「動物実験での結果ではあるが、ウサギに溶存酸素濃度45、80、150mg/Lの水を強制投与し、胃内、腹腔及び門脈の酸素分圧を測定したところ、酸素
は胃内から門脈、門脈へ吸収され、容量依存が確認された」という資料4」が参考として記載されている。ただ、当該資料では、試験に用いた溶存酸素水の濃度は製造後2時間で
半減することから製造直後飲用させなければならないこと、飲用時溶存酸素濃度が80ppm以上でないと効果はないとしている。
一方、最近になり韓国の大学から、ニワトリおよびブタを用いた動物実験で、高濃度溶存酸素水(45mg/L、水道水の6.7 倍)の飲用によりサルモネラ菌に対する免疫力が高まった
と報告された5)。この酸素水は飲用にあたって一日に3回取り替えているが、論文によると取り換え時の残留溶存酸素度は38mg/Lとしており、比較的長く濃度が維持されている。
したがって、上述の酸素水に比べ溶存酸素量は比較的安定していると思われるが、動物体内で酸素濃度がどの程度上昇したかについての記載はない。
著者らは気液混合装置(特願2010-279153)を新たに開発し、同装置を用いて高濃度溶
存酸素液(製品名:WOX)を製造、2011年より市販しているが、WOXは長期に亘って溶存酸素濃度が維持できることを予備試験で確認した。本論文では、改めてWOXにおける
溶存酸素濃度の継時的変化について検討するとともに、飲用試験協力者への飲用実験で、動脈血酸素飽和度(SpO2)が上昇するかどうかを検討した。

対象と方法

高濃度溶存酸素液(WOX)製造
逆浸透膜装置を用いて公営水道水より純水(RO 水)を製造し、10—15℃の低温装置において、純酸素を溶存酸素濃度が40ppm以上になるまで注入・撹拌混合して(撹拌時間は
原則として30分以上)、500mLのペットボトルに詰めた。また、試験目的によりフラスコなどに詰め、試験用検体とした。なお、検体は目的によって密栓状態あるいは開栓状態で
静置・保管した。保管は原則として室温としたが、試験により4℃で保管した。保管法の詳細は実験結果に記載する。
WOXの溶存酸素濃度測定
溶存酸素測定には隔膜式(タフネスDO CGS-5、セントラル科学、東京)および蛍光式(ProODO 、ザイレムアナリティクス、神奈川)の2法を用いたが、通常の測定には主として
前者を用いた。ProODOは主としてタフネスDO CGS-5による溶存酸素濃度測定値の確認のために用いた。なお、タフネスの測定ではセンサー部分の検体の流速を30 cm /秒
以上にするように記載されているが、WOXでは激しく上下に搖動することにより溶存酸素度測定値があがることから、当該溶存酸素測定計製造会社との協議に基づき強くより
搖動させる変法を採用した。蛍光式は添付のマニュアルの指示に従い検体の搖動はしていない。
飲用試験協力者における動脈血酸素飽和度(SpO2)測定
健常な成人協力者(年齢25歳から82歳)にWOXの飲み方および検査法ついて説明するとともに、個人情報開示なしを条件に関係学会等に発表することの了解を得た。被験者に
パルスオキシメータ(コニカ ミノルタ社、東京)を装着し、WOX飲用前および後に脈拍数および動脈血酸素飽和濃度を測定した。被検者の性別及び年齢ならびに一般健康状態は
ヒアリングにより調査した。なお、飲用前のSpO2測定値が92以下を示した例は健常者とはいえない(コニカ ミノルタ社の助言)ことから集計から除外した。また、飲用前にパルス
オキシメータ測定値が100を示した例も上昇値の測定が出来ないため、集計から除外した。被験者には試験前にWOX効果・効能についての予備知識は与えていない。
被験者は以下のとおりである。広島市で開催された食品関連学会参加者のうち、協力の得られた43名(第1日19名、第2日24名で両日の被試験者は異なる)にWOXを150-200 m
L飲用し、1-2分後にパルスオキシメータでSpO2を測定した。第1日(試験1)の被試験者は男性10名(平均年齢56歳)、女性9名(平均年齢57 歳)が参加した。第2日(試験2)で
は男性8名(平均年齢40歳)、女性16名(平均年齢57歳)が参加した。京都産業大での飲用試験(試験3)でも同様に150-200mL飲用およそ5分後に測定した25名(男性14名平均
年齢60 歳、女性11名平均年齢56歳)が参加した。

結 果

1.WOX製造後の溶存酸素濃度の経時的変化に関する試験
著者らが開発した気液混合装置で製造した高濃度溶存酸素液の酸素保存性を確認するために、溶存酸素濃度の経時的変化を測定した。WOXを4Lフラスコにいれ、4℃で保管
したものを図1に示す日程で測定した。タフネスDO CGS-5を用いる測定では、WOXをいれたフラスコをスターラ上に設置して、撹拌子をいれ、測定器のセンサー部は強く搖動さ
せた。測定は製造直後(0日)、4日後、7日後、その後14日、21日、および31日後までとした。 溶存酸素濃度は製造直後58ppmであった。その後経日とともに減少したが、31日後
でも30.2ppmであった(図1)。

2.溶存酸素濃度測定計の比較
予備試験ではタフネスDO CGS-5のみ用いたことから、数値の正確性を確認するために測定原理の異なるProODOを用いて溶存酸素濃度を測定した。試験に用いたWOXは
新たに製造した。溶存酸素濃度はProODOにおいてタフネスDO CGS-5より少し高い値を示したが大きな差は見られなかった (表1)。

3.試験協力者におけるWOX飲用前及び飲用後の動脈血酸素飽和度(SpO2)の変動
被試験者におけるWOXの飲用前および後のSpO2の変動および標準誤差を図2に示した。試験1の被試験者は男性10名、女性9名で、性別によるSpO2の平均値は男性が97.6、
女性が96.8 であった。飲用後は男性で98.8、女性で97.6と上昇した(図2、試験1)。試験2日では男性8名、女性16名で、性別によるSpO2は飲用前には、男性98.0、女性97.4と
男性でやや高値であった。飲用後は男性で98.9、女性で99.2 と女性で何れも上昇した。試験3では男性14名、女性11名では、男性に飲用前の平均SpO2値は96.4、女性では95.3
であったが、飲用後は男性で97.6 、女性で96.9と上昇した。図2に示すように、1%以上の上昇が見られた例もあった。なお、図2には示していないが、比較対照のためにA社およ
びB社の製品についても飲用試験を行ったところ、飲用前と飲用後のSpO2の差は、A社では97.2から97.0、B社では97.3から97.3と上昇はみられなかった。さらに、A及びB製品を
飲用した一部の被試験者にWOXを飲用させたところ、飲用後のSpO2はA社の10名中1名、B社の14名中4名を除いて全て上昇した。

考 察

酸素は地表水にも溶解しているが(1気圧20℃で1L当たり6-9ppm程度)、高濃度酸素水は通常の地表水の溶存酸素濃度よりも多い量の酸素を溶かし込んだ水である。わが国
でも自然界の水の5-10倍程度の濃度の酸素が含まれる高濃度酸素水が現在市販されており、飲用効果として「スポーツ時の酸素補給や酸素不足からくる疲れなどの体調不良
の解消」「頭がすっきりする」、「ダイエットによい」などといわれているが、上に述べたように効果が検証された論文はない1)。人体内の溶解型酸素量は全酸素量の2%とされてい
るが、赤血球と結合していないことから、赤血球が通過出来ないような末梢血管や赤血球のないリンパ液でも運ばれ全身にいきわたることから、その役割は大きい。そのため、
溶解型酸素を増量させる高気圧酸素カプセルの効果は健康維持のみでなく、美容、疲労回復、免疫機能亢進など様々な分野での効果が期待されている。一方、高濃度酸素は
活性酸素の増加になり毒性がある、あるいは飲用により補給される酸素量は大気中の酸素量に比べて極めて少なく、1-2回の呼吸で取り入れる酸素よりも少ないことから無意味
であるという否定的意見もインターネットで散見される。しかしながら、高気圧酸素カプセルで補給される溶解型酸素での活性酸素の増加は否定されている8)。また、高濃度酸素
水の飲用は実験動物に対して遺伝毒性も示さないことが明らかにされており9)、われわれの検討でもWOXの飲用による有害事象はない。さらに、本試験でも示したようにWOXを
飲用することによる酸素補給効果があきらかになった。高気圧酸素カプセルは、設置場所や経費が問題となるが、今回開発・製造したWOXはペットボトル詰めであり、持ち運びが
容易であるだけでなく、高圧酸素カプセルに入ったと同様な効果が期待できることがわかった。したがって、WOXは常圧でも高濃度の溶存酸素の維持が可能であり、手軽に酸素
補給が出来る製品と考えられる。なお、ボトル内で溶存酸素濃度が長期間維持されている要因については現在解明中である。
本試験では、被試験者体内への溶存酸素の取り込みの簡易測定法としてSpO2の測定を用いたが、石原昭彦教授の高気圧酸素カプセルでの実験において、カプセルに入ると
SpO2が上昇するという報告10) に基づき、SpO2測定という非侵襲的な方法で溶存酸素体内への取り込みが推定できると考えた。なお表に示していないが、WOXの飲用70名の
うち、飲用後のSPO2は低下の1名と変化なしの11名を除く58名(82.9%)で上昇がみられた。また、性別では女性で効果がみられる例が多い傾向があったが、飲用前のSpO2は
男性に比べ低い傾向にあったためとも思われる。さらに、飲用後のSpO2に変化なしの例について詳細に検討すると、飲用前のSpO2が97:2名、98:7名、99:1名であり、いずれも
飲用前から高値の傾向にあった。今回の試験では、SpO2の測定を被試験者個々人に任せたが、測定器はSpO2測定法として汎用されているものであり、測定器を被験者の指
に設置したままで飲用前および飲用後のSpO2測定を行った。したがって、SpO2の上昇はWOXの溶解型酸素は体内に吸収されたためと推察される。一方、市販の高濃度酸素水
はラベルには150ppmあるいは120ppmと記載されているが、飲用してもSpO2は全く上昇しなかったことから、WOXの飲用で得られる効果は従来の製品と異なることがわかった。
現在WOX飲用希望者による予備試験において慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状、うつ症状や糖尿病が改善するという結果を得ており、WOXは酸素補給材料として有用と考え
ているが、今後二重盲検などにより飲用効果を確認したい。

結 語

WOXの溶存酸素は大気下でも長期に安定して存在することがわかった。また、WOXに含まれる溶存酸素は飲用することにより消化管より体内に吸収されSpO2測定値を上げる
ことが強く推定された。このことからWOXは体内への酸素補給法として有効であることが示唆された。

謝 辞

広島市でのWOX飲用試験の実施にあたってご協力頂いた県立広島大学狩谷明美准教授に深謝致します。
本論文の一部は第9回日本予防医学会(2011年11月)において発表した。
利益相反自己申告:申告すべきものなし

文 献

  1. 国立環境研究所 地球環境センターニュース, 2012; 23 (8).
  2. 肺年齢普及推進事務局公式ホームページ:http://www.hainenrei.net/
  3. 国立健康・栄養研究所構築グループ:「酸素水」の効果に関する情報(ver.090219), 2006.
  4. Jung B-G et al: Oxygenated drinking water enhances immune activity in broiler chicks and increase survivability against Salmonella Galinarum in experimentally infected broiler chicks. Jpn Vet Sci 2012 ; 74: 341-346.
  5. Jung B-G et al: Oxygenated drinking water enhances immune activity in pigs during Salmonella Typhimurium infection. Jpn Vet Sci 2012 ;74:651-655.
  6. Forth, W and Adam O: Uptake of oxygen from the intestine-experiments with rabbits. Eur J Med Res 2001; 6:488-492.
  7. Gruber R et al: The influence of oxygenated water on the immune status, liver enzymes, and the generation of oxygen radicals : a prospective, randomised, blinded clinical study. Clinic Nutr 2005; 24:407-414.
  8. 宮崎 豊:http://healthcare.moominkobo.com/faq/
  9. Speit G. et al: Oxygenated water does not induce genomic effects in the comet assay. Toxocol Letters 133(2002),203-210.
  10. 石原昭彦;高気圧・高酸素濃度は筋疲労及び筋痛を早期に回復できるか. 石本記念デサントスポーツ科学振興財団研究成果報告書, 2005 ; 9:16-22.

図1 WOXの溶存酸素(DO)濃度の経時的変動

図1 WOXの溶存酸素(DO)濃度の経時的変動

表1  溶存酸素測定計の比較 (ppm)

試験 タフネスDO CGS-5 ProODO
試験 I 41.0 42.0
試験 Ⅱ 31.8 33.9
試験 Ⅲ 23.3 24.9

WOX 2Lを容器に入れ、直後および24時間後に
測定。タフネスについてはセンサーを搖動させた。

図2 WOX飲用前および後のSpO2値の変動

図2 WOX飲用前および後のSpO2値の変動

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